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9つの金の卵

「金の卵」なんて言葉、今はあまり使わなくなったが、町民劇団TAKE TO YOUのメンバーの中にも、「金の卵」がたくさんいる。今、中学2年生の9人だ。5年前、ぼくは初めて訪れた武豊町の公民館で、小学4年生の彼女たちと出会った。 劇団の創生期、お芝居がやりたいと集まった彼女たちとかかわって、正直ぼくは、「声が出ん。歌えん、踊れん。こりゃあ無理やで」と頭をかかえた。ところが、舞台役者として大きく成長した今の彼女たちを見ると、そんな思いは吹っ飛ぶ。

たぶん間違いなく、今の彼女たちは「愛知県」いや「東海」でもトップクラスの中学生の俳優さんだ。もし、彼女たちが同じ高校に入学して、演劇部に入ったとしたら、2年後にはきっと「全国」も夢ではないだろう。そんな夢をいち早く証明したくなって、今回のお芝居「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」を作ります。 みなさん、ぜひこの町の才気ある9つの金の卵たちを応援してください。

作・演出  右来左往

思い出し魔法

人の脳は成人で約1,300g、10歳(小学4年生)頃にこの重さへ到達し、機能的には20歳頃に完成すると聞いたことがあります。この脳は、五感で感じたことを記憶し、必要な情報を整理し、それを思い出し、人を動かしているようです。よく自身の年齢を感じるときなどに、「物忘れが多くなった」と思うことがありますが、これは「思い出す力」が少し衰えただけで、記憶されたことが無くなってしまったわけではないようです。こう思うと、確かに、小学4年生頃を境に、「記憶」に関する境界線(鮮明さ)があるような気がします。また、筋力と同じで、使わなければ衰えてしまうのが、この「思い出す」という脳の機能のようです。

この作品は、1969年のお話。右来左往さんのかけた「思い出し魔法の力」によって、その時代を「衰え」によって記憶から無くしてしまったとあきらめていた僕たちの脳から、それぞれが持っているはずの「確かなもの」を運んでくれているような気がしています。

武豊町民劇団 TAKE TO YOU 代表  小林 康