サイエンストーク 日本化学工業株式会社「色とりどりのカプセルを作ろう!」

2020年9月12日(土)サイエンストーク日本化学工業株式会社「色とりどりのカプセルを作ろう!」が開催されました。

 子どもたちの目と心がどんどん集中していく。自分の頭をフル回転させ、疑問に向き合い、アイデアを出す。そのアイデアを実行するために、ますます自分の指先の動きに集中していく。こんな姿を生み出したのは、大人の真剣さでした。このサイエンストークに取り組んだ日本化学工業株式会社愛知工場の大人たちの真剣さが、参加者の子どもたちを変えていったのです。そして、子どもたちの笑顔や驚きの表情が大人たちに大きな力を与えていくのでした。こんなすばらしい空間を作り上げたサイエンストーク「色とりどりのカプセルを作ろう」について書いてみます。



 その日、会場の創作工房にはビーカーやトレイなどの実験器具が各机の上に整然と並んでいました。前日のうちに日本化学工業株式会社愛知工場のスタッフの人たちが準備をしてくれていたのです。いつもの創作工房が実験室に変わっていました。


 今回は、新型コロナウィルスへの対応で、スタッフの皆さんはマスクと消毒・検温などの対策を行い、講師の人はフェイスシールドを準備していました。定員もいつもの半分にして開催しました。受付でも、感染予防のために、参加者のマスクの確認と検温・消毒を行いました。
 受付を終えて入室すると、そこには名札と白衣が用意してありました。席について白衣を着ると、なんと参加者一人ひとりの体の大きさにぴったりでした。体に合わない白衣では実験器具を扱いにくいということなのでしょう。申込時に身長を確認し、それぞれに合う白衣を準備してくれていたのです。白衣を着た小学4年生から6年生はいつもと違った雰囲気の中で、少し緊張しながらも何が始まるのかと、ちょっとワクワクしていました。



  最初に工場長さんから、「日本化学工業を知っている人はいますか」と質問がありましたが、一人も手が上がりませんでした。工場長さんは「では、説明のしがいがありますね」と楽しそうに会社の説明をしていきました。愛知工場では、「私たちの暮らしに欠かせない化学薬品を作っている」というのです。聞いていた子どもたちの頭の中に、「化学薬品ってなに?」「あぶないもの?」と次々に「?」が浮かんできました。工場では「りん酸」という化学薬品を作っていて、それは「ジュースや炭酸飲料をおいしくしたり、スマホやタブレットの内部部品をきれいにしたり、野菜の栽培の肥料にしたり、自動車の車体がさびないようにしたりするために使われるものです」と説明がありました。それに、「りん酸ソーダというのは、カップ麺のつるつる感を出したり、ハムやソーセージのおいしい歯ごたえを出したり、デジカメのレンズの材料になったり、セーターなどの着心地をよくして毛玉を防止したりする」ともいうのです。子どもたちも聞いているうちに、「へー、私たちの生活のいろいろなところで役に立っているんだな」と少しずつ分かってきました。でも、「なぜそうなるのかな」という疑問の「?」を、まだ頭の中に持つ子もいました。それでも、そんなすごい工場が武豊町の東の海辺にあることを、初めて知ったのでした。




 いよいよ、講師の先生にかわり実験開始です。最初は『化学反応ってなぁに』です。透明感のある黄色い液の入った容器が一人ひとりに配られました。講師の先生に「軽く振って」と言われて振ってみると、びっくり中の液が赤く変わったのです。今度は「もっと強く振って」と言われたので思いっきり振ると、またまたびっくり、なんと赤から緑に変わったのです。子どもたちが「えー」と驚いていると、「では、机の上に置いて、静かにしておいてください」と言われました。すると今度はだんだんと緑から赤、赤から黄色へと色が元に戻っていきました。液体は着色料、ブドウ糖とアルカリ性の薬品を混ぜたものです。その黄色の液体が、容器の中の空気と反応して色が変わったというのです。そしてそれが「酸化」という反応で、静かにしておくとブドウ糖の働きで色が元に戻るのが還元という反応ですと説明をしてくれました。
 子どもたちには言葉は難しそうでしたが、こんなふうに「物質が変化して別の物質に変わることを化学変化というのだ」と体験的に教えてくれました。子どもたちの目がますます真剣になっていきました。



 次は、本日のメインの「色とりどりのカプセルを作ろう」です。実験の注意事項を聞く姿勢も緊張感がありました。保護メガネとゴム手袋をして、配られた容器をデジタル秤にのせ、塩化カルシウムを指示されたとおりの50グラムにきっちり量って容器に入れ、そこに指定された目盛まで水を正確に入れました。その後、粉を完全に溶かすまで攪拌棒でかき混ぜました。そのていねいで真剣な作業は見事でした。各テーブルについたスタッフの方も子どもたちが作業することを優先し、安全に気を付けて見守っていました。
 塩化カルシウム溶液(A液)ができたら、スタッフの人たちが予め用意しておいたアルギン酸ナトリウム溶液(B液)とオレンジ色の絵の具を混ぜたものを一人ひとりに配ってくれました。スポイトでオレンジ色のB液を吸い取って、一滴ずつ静かにA液に落としていきます。すると、A液の中に、1ミリほどのオレンジ色の粒が次々とできていくのです。ほんとに、小さなイクラがどんどんできていくのです。思わず力が入って、ビューっとスポイトを絞ってしまうと、ヒョロヒョロと長いオレンジのひもができてしまいます。思ったより丸い粒を作るのは難しそうです。ますます、子どもたちは真剣になってスポイトを操作していました。




 上手に粒ができるようになった頃、「では、本番です。自分の好きな絵の具を透明なB液に混ぜて、オリジナルのイクラを作ってみましょう」と講師のから声がかかりました。子どもたちの目がいっそう輝きました。子どもたちが自分のイクラを作れるのです。自分の好きな色をパレットにとって、どんどん「自分色のイクラ」をA液の中に作っていきます。いろいろな色のイクラがたくさんできると、用意してくれていた小びんの中に、きれいな形のものを選んで入れていました。びんの中では、様々な色のイクラの粒がゆらゆらと漂って美しくて不思議な世界ができあがっていました。


 「いよいよ最後の実験です。つかめる水を作ります」と講師の先生が言いました。「なに、水がつかめるってなに?」またまた、子どもたちの頭の中に「?」が生まれます。透明なB液を、料理でつかう「お玉」にいっぱい入れ、静かに乳酸カルシウム(C液)に中に沈めました。すると、B液の表面に一瞬で薄い膜ができ、丸くなったのです。そして、その玉は、そっとさわると手で持てたのです。
その時、誰かが言いました、「これに色をつけたらどうなるのかな?」と。どの子どもたちの目も輝きました。その後は、いくつものオリジナルの「つかめる水」ができてきました。また、誰かから「これも持って帰りたい」という声が出ました。すると、なんと金魚すくいで使うようなビニール袋がスタッフから渡されました。気がつくと全員がカラフルイクラの入った小びんと、つかめる水の入ったビニール袋をお土産に持っていました。


  驚きの連続の実験が終わり、みんなで協力して片付けたあと、工場長さんがメッセージを伝えました。はじめに、クラゲの光る仕組みを発見しノーベル化学賞を受賞した下村脩さんと、リチウムイオン電池を開発しノーベル化学賞を受賞した吉野彰さんを紹介してから、三つのメッセージを話しました。それは、「化学は身近なところで起こっている『変化』」ということ、「化学の力で社会に役立つすごいことができる」ということ、「何にでも興味を持ってチャレンジしてほしい」ということでした。そして、最後に「日本化学工業を知っている人」と聞きました。すると、もちろん全員がうれしそうに手をあげました。
 終了後、子どもたちはお土産を持って、お迎えの家の人と今日何をやったのかを話しながら楽しそうに帰って行きました。


 参加した子どものアンケートでは、全員が「とてもおしろかった」と答え、「化学反応がとてもすごいことでおもしろいなと思いました。(小学4年・女子)」とか、「化学者の気持ちがわかった。化学って楽しいし、発見があったり、説明を聞いて分かったこともありました。(小学4年・女子)」などの感想が書いてありました。
 子どもたちの興味や関心を、本気で受け止めようとする大人たちの熱い思いが感じられた講座でした。また、その思いが子どもたちの未来につながっていくことも感じられました。武豊は、大人も子どももすごいです。
By高水源